特別展「パリに生きる パリを描くーM氏秘蔵コレクションによるー」

 

特別展

「パリに生きる  パリを描く

 

ーM氏秘蔵コレクションによるー」

 

 

 藤田嗣治、佐伯祐三、荻須高徳、小磯良平ら、パリに憧れ、パリを描いた画家たちの作品を集めた必見の展覧会が、神戸市立小磯記念美術館において好評開催中である。

 

なぜ、必見かというとMという個人コレクターの所蔵のため、美術館の学芸員や館長という美術の専門家でもこれだけ揃ったものを見たことがないというくらい「秘蔵」の作品群だからだ。

 

Mコレクターは約30年間にわたり、「パリを描いた日本人画家」に的を絞って作品を集め、珠玉のコレクションを形成したという。 

そのきっかけになったのが、美術館での展覧会を鑑賞してからだという。

 

好きな作品を集めるということは個人コレクターに多いことだ。しかし、一つのテーマを系統だって集めることはことのほか難しいのだ。

 

 小磯良平 《巴里風景》 1960年頃 油彩     以下撮影すべて 浦 典子 撮影許可取得済

 

笠岡市立竹喬美術館館長が、Mコレクターを「発見」したのが2013年。

 

たった4年前まで、あまり知られていなかったコレクションなのだ。

 

小野竹喬は、筆者がこのサイトを書き始めるきっかけになった最初の展覧会だ。

 

お孫さんが、「画家の家族は幸せです。祖父が亡くなってもその作品に会えますから。」と筆者におっしゃって下さったことを7年経った今でも鮮明に覚えている。

 

竹喬デザインのお着物が大変美しく映えていたことも印象深かった。

 ☆小野竹喬展

   http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2009-11-28

   

この展覧会は、エコール・ド・パリを代表する藤田嗣治をはじめ、児島虎次郎、梅原龍三郎、安井曾太郎、佐伯祐三、荻須高徳、小磯良平、鴨居玲など、

パリに憧れ、パリに渡った洋画家たちの足跡と果たした役割を検証するもの。

 

笠岡市立竹喬美術館、稲沢市荻須記念美術館、神戸市立小磯記念美術館の3館による共同企画の展覧会で、

このコレクションがまとまって公開されるのはもちろん初めて。

 

Mコレクター秘蔵コレクション70点を中心に、3館の所蔵品を加えた計100点の作品と資料を紹介するもの。

 

さらに、神戸市立小磯記念美術館では、これらに加え、小磯作品や小磯が投函した絵葉書も展示している。

 

これらは、この展覧会の図録に掲載されていないのでぜひ、見ていただきたい。

 

この展覧会の担当で学芸員の廣田生馬担当係長は、「30年もの長き間に蒐集された貴重な作品をぜひ鑑賞していただきたい。

それだけではなく、これらの画家の交流や結びつきなど相関関係にも着目するとよりいっそう興味深いものになると思う。」と語る。

 

児島虎次郎に関しては、筆者が以前記した記事を参照されたし。

 

☆エル・グレコ展

 

    http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-12-18

 

☆熊本日日新聞社の創立70年を記念  大原美術館展

 

http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2013-02-07

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       児島虎次郎 《市場》1910-12年頃 油彩

 

岡田三郎助については、以下で記している。

 

☆いわさきちひろ展~母のまなざし・子どもたちへのメッセージ~

 

    http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-04-27

 

☆沖縄復帰40周年記念   紅型 BINGATA-琉球王朝のいろとかたち-

 

    http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-07-17-1

 

    http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-10-11

 

    http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2012-11-18

 

☆生誕130年 川瀬巴()(すい)

 

http://artnews.blog.so-net.ne.jp/2014-03-11

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              岡田三郎助 《ヴィル・ダヴレー》1897-1901年頃 油彩

 

 おすすめは、この展覧会の図録だ。痒い所に手が届くとはこういうことを言うのだろうと思える素払い出来栄え。

 

各館の学芸員による詳しい画家の足取りが書かれており、エヴィデンスに基づいたそれは物語の読み物といても大変面白いのだ。

 

1960年頃の小磯良平の作品《巴里風景》を初めて筆者が拝見した時、いわゆる「小磯良平タッチ」の作品ではなく、キュービズムの影響が色濃いため、「えっ、小磯良平の作品?」と最初に感じた。

 

この絵は小磯良平の作品としては、大変珍しいアプローチによるものだと筆者は感じる。

 

廣田生馬担当係長は図録の中で、詳しくドラマティックに記している。

 

この絵は、廣田生馬担当係長が学芸員になって四半世紀で初めて間近に接することのできた小磯良平の二回目に渡仏した時に描いた油彩画であるという。

 

もう一枚の油彩画はシャルトルを描いたものだが、所在不明だ。

 

それだけ、この絵の希少性が高いということだ。

 

また、この絵の下絵は、「オーヴェルの風景」と長くされて来たというが、この絵は、《巴里風景》と題されている。

 

筆者は、オーヴェル(オヴェール)=シュル=オワーズ (Auvers-sur-Oise)を訪れたことがある。

 

ゴッホが最期の数か月を過ごし、没した宿屋、ラヴー旅館 (L'Auberge Ravoux)、ゴッホが描いた教会、

 

セザンヌの描いた『オーヴェルの首吊りの家』、ポール・ガシェ医師の家を訪れ、ゴッホ兄弟の墓参りもした。

 

村をまる一日かけて歩き回ったり、ラヴー旅館(現ゴッホの家"Maison de Van Gogh")の館長にインタビューし、その後、ご厚意で筆者のパリの定宿まで車で送っていただいたこともある。

 

http://www.maisondevangogh.fr

 

  小磯良平がありのままを描いたとしたら、オーヴェル(オヴェール)=シュル=オワーズは、こんなに建物が密集していないことは断言できる。

 

21世紀の今、ロバや羊がオーヴェル(オヴェール)=シュル=オワーズで飼われているくらいののどかな村だからだ。

 

 パリのどこから描いたかはこれから調査の余地があると廣田生馬担当係長は図録に執筆している。

 

すなわち、この展覧会によってこの絵の下絵が恐らく1961年ごろから「オーヴェルの風景」とされて来たが、それは間違いで、

「巴里の風景」であったことわかったと筆者は考える。

 

1961年ごろには、実際にオーヴェル(オヴェール)=シュル=オワーズに行った人は少なかったであろうし、2017年の今でも少ないので致し方ないことであろう。

 

 まる一日歩けば、オーヴェル(オヴェール)=シュル=オワーズの村の概要が掴める。

 

 その感覚からして、筆者は、「巴里の風景」説を推したい。

 

また、廣田生馬担当係長は、小磯良平がシャルトルを訪れていたことを図録に記している。

 

カタログ作品#79の荻須高徳の《洗濯場》とあるが場所は記されていない。

 

もしかしてだが、荻須高徳もシャルトルを訪れ描いたのではないかと筆者は密かに考えている。

 

というのも冬にシャルトルを一度訪れ、その町に惹かれて翌年の夏、もう一度長期滞在した経験が筆者にあるからだ。また、一度プチトランに乗って町を一周した際、そこの洗濯場に心惹かれ、天気のいい日にもう一度撮影しに行ったことが廣田生馬担当係長の図録の論文を読んでいて思い出された。

 

筆者が惹かれたように荻須高徳も「洗濯場」に惹かれたとしたらうれしい限りだ。

 

過去に撮った写真のストックの中から探したシャルトルの「洗濯場」がこちら。

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もし、荻須高徳の描いた「洗濯場」の場所がわかったら、教えていただきたいと願っている。

 

そして、この図録には、さらにもう一つ、特別な魅力がある。

 

2016年に実際にパリで絵画の制作地を調査した写真が掲載されているのだ。

 

この展覧会を鑑賞しているとパリの街を歩いているような気持ちになることを察して、絵画と写真を並べてくれている。

 

写真のストックの中から探そうと思い立ったのもこのリポートが大きく影響している。

 

Mコレクターは関西在住という。どんなかたなのか興味は湧くがそんな無粋な詮索

 

を筆者は一切するつもりはない。

 

ただ、これだけクオリティの高い作品をよく蒐集してくれたという感謝のみだ。

 

美術を興隆させるためには画家のみならずそれを援助するコレクター、そして画廊や美術館も大きな役割を果たす。

 

そして、来場者も大きな役割を果たしているのだ。

 

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     佐伯祐三 《パリの坂道》 1927年 油彩

 

 この展覧会にぜひ行っていただきたいとお勧めする理由は、この美術館のスタッフのかたがたの接遇の素晴らしさだ。みんな笑顔で包み込んでくれる。

 

 筆者だけにそうなのかと思い、他の来場者に対する接し方を観察していると、どなたにも温かく接している。頭が下がる思いだ。

 

 接客業に就いているかたはぜひ、体験してみていただきたい。

 

何を筆者が言いたいかを体験できるはず。

 

 美術展を鑑賞するかたは、その作品群を鑑賞しに来るだけではない。

 

作品群を含めた空間や美しくあたたかい体験をしたいと思って訪れるのだ。

 

2月19日には、マンスリーコンサートも実施される。

 

ぜひ、この展覧会と美術館を体験することを強くお勧めする。

 

もう二度と見られない。公にされていない個人コレクターの所蔵作品展だからだ。

 

お見逃しなく。

 

このエリアのみ記念撮影もできる。

 

会期

 

2016(平成28年)12月17日(土曜)~2017(平成29年)2月19日(日曜)

 

休館日

 

毎週月曜日

 

開館時間

 

午前10時から午後5

 

入館は閉館の30分前まで

 

入館料

 

一般800(600)円、高大生600(400)円、小中生400(200)円

 

※(  )内は30名以上の団体

 

※神戸市老人福祉手帳(すこやかカード)持参の方は400円

 

※のびのびパスポート、障がい者手帳など持参の方は無料

 

主催

 

神戸市立小磯記念美術館、笠岡市立竹喬美術館、稲沢市荻須記念美術館、神戸新聞社

 

後援

 

NHK神戸放送局、神戸新交通株式会社、サンテレビジョン、ラジオ関西

 

助成

 

一般財団法人地域創造

 

 

 

*同時開催 「小磯良平作品選Ⅳ―油彩―」

 

小磯良平の初期から晩年までの油彩作品約30点を展示し、小磯良平の画業をたどる。

 

☆特別展解説会

 

 毎週土曜日の午後2時~(30分程度) 2階絵画学習室にて

 

※1/14、2/11を除く解説会

 

☆小磯記念美術館マンスリーコンサート

 

日時:2月19日(いずれも日曜)午後2時~(1時間程度)

 

※コンサートは申込不要・無料だが、入館料が必要。

 

※コンサートは毎月第三日曜日、午後2時から開催。

 

 

 

☆神戸市立小磯記念美術館ホームページ

 

     http://www.city.kobe.lg.jp/culture/culture/institution/koisogallery

 

☆読者プレゼント 

 

   1020名様にご招待券 プレゼント

 

   あて先 :  loewy@jg8.so-net.ne.jp

 

   件名:展覧会名と会場名

 

   本文:ご住所、お名前

 

   をお書きの上どしどしご応募下さい。

 

       締切:http://art-news-jp.jimdo.comにてUPした日の午前零時

 

   発送をもって当選と代えさせていただきます。

 

 

 

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